技術派遣からメーカーへ転職した理由|「このままでいいのか?」から始まった決断

私は技術派遣として、メーカーの開発現場で約10年間働きました。
ものづくりに携わることができ、優れたエンジニアにも囲まれ、技術者として多くの経験を積むことができました。
私のエンジニア人生の始まりについては、
✅「就職氷河期にメーカー全滅。それでもエンジニアになった私の社会人生活の始まり」
で詳しく書いています。
仕事そのものに大きな不満があったわけではありません。
それでも、ある頃から、
「このままでいいのだろうか?」
と考えるようになりました。
きっかけは、派遣先で出会った何人かの優れたリーダーでした。
技術力が高いだけではなく、周囲をよく見て、人を動かし、チームをまとめ、プロジェクトを完遂していく。
私はその姿を間近で見て、
「自分も、こんなリーダーになりたい」
と思うようになりました。
そして同時に、
今の自分の延長線上に、その姿へつながるキャリアパスがあるのだろうか。
という不安も持つようになりました。
私にとって転職は、今の職場から逃げるためのものではありませんでした。
なりたい自分に近づくために、環境を変える必要があると考えた結果でした。
技術派遣として働く中で、憧れるリーダーに出会った

派遣先の開発現場には、尊敬できるリーダーの方が何人もいました。
その中でも、私が一番すごいと感じたのは、
とにかく「気づく」人だったことです。
自分自身にも当然、開発の仕事があります。
それでも周囲をよく見ている。
チーム全体の状況だけでなく、そこにいる一人ひとりのことも見ている。
メーカー社員ではない私に対しても、よくアドバイスをくれました。
私は当時、
「どれだけ視野が広いのだろう」
と感じていました。
自分の仕事をこなしながら、周囲を見る余白がある。
そして、チームを作り、メンバーを動かし、最終的にはプロジェクトをやり遂げる。
その姿を間近で見て、素直に尊敬しました。
技術力の高いエンジニアには、それまでにもたくさん出会っていました。
でも私は次第に、
技術ができるだけではなく、人やチームを見ることができる人になりたい
と思うようになりました。
それが、私が初めて具体的に思い描いた「なりたいリーダー像」だったのだと思います。
「今の延長線上に、その姿になれる道があるのか?」
リーダーを目指したい。
そう思うようになってから、今度は自分の立場を考えるようになりました。
私は技術派遣として、実務担当の立場で開発現場に入っていました。
当然ながら、メーカー社員と派遣では立場が違います。
アクセスできる情報の範囲も違います。
契約上も、私に期待されていたのは実務担当としての役割でした。
その立場のまま、メーカー社員を束ねるリーダーになる。
少なくとも、当時の私が置かれていた環境では現実的ではありませんでした。
これは技術派遣という働き方そのものが悪い、という話ではありません。
私は技術派遣として多くの経験を積むことができましたし、その環境に恵まれたとも思っています。
ただ、
自分が目指したい役割と、当時の自分が置かれていた立場が合わなくなってきた。
それが問題でした。
このまま技術者として経験を積み続けることはできる。
でも、自分が憧れたようなリーダーシップやマネジメントを経験するには、何かを変えなければならない。
そう考えるようになりました。
チームを率いたいなら、その立場になれる環境へ行くしかない
考えれば考えるほど、答えはシンプルでした。
チームを率いる経験を積みたいなら、
チームを率いることが可能な立場になれる環境へ行く必要がある。
私はメーカーへの転職を考えるようになりました。
新卒の頃にもメーカーを目指していました。
しかし当時とは理由が違います。
学生時代は、
「電化製品を作りたいからメーカーに入りたい」
と考えていました。
約10年後の私は、
「技術だけでなく、人やチームを動かす経験を積みたい」
という目的を持っていました。
環境を変えなければ、自分が目指したい姿には近づけない。
そう考え、転職を決めました。
転職は、不安がなくなってから決めたわけではない

もちろん、不安はありました。
むしろ、不安だらけだったと言っていいと思います。
それまで築いてきた人間関係を離れ、新しい環境でまた一から人間関係を作らなければならない。
私はコミュニケーションが得意な方ではないので、それだけでもかなりのパワーが必要だと分かっていました。
技術力についても不安でした。
約10年の経験はある。
それでも、新しい会社で本当に自分の技術が通用するかどうかは、実際にやってみなければ分かりません。
さらに、当時の私は結婚して家庭もありました。
今いる場所には、すでに慣れている。
仕事も分かる。
人間関係もある。
それを手放して、新しい環境へ移る。
怖さがないはずはありません。
それでも私は、最終的に転職することを選びました。
転職に限った話ではありませんが、私は何か大きなことを決断するとき、
どちらを選んでも、きっと何らかの後悔はある
と考えています。
私は、転職先に行けばすべての不満がなくなるとは考えていませんでした。
逆に、今の環境に残ったからといって、何も後悔しないとも限りません。
どちらを選んでも後悔する可能性があるのなら、
自分で決めて、行動した結果として後悔した方が納得できる。
私はそう考えました。
少なくとも、
「あのとき行動していれば」
という後悔だけはしたくありませんでした。
新卒のときには開かなかったメーカーの扉が、10年後に開いた
約10年前、新卒だった私はメーカーへの就職を希望しながら、採用されませんでした。
しかし今度の私は、何の経験もない学生ではありません。
約10年間、製品開発の現場で実務を経験してきました。
転職面接の場で、面接官から言われた言葉を今でも覚えています。
「エンジニアとしては珍しく、説明が上手ですね。」
続けて、
「なぜ説明することが上手なのですか?」
と聞かれました。
私はその場で、自分がこれまで考えてきたことをそのまま答えました。
派遣という働き方では、純粋なエンジニアというだけではなく、
さらに付加価値を提供するサービスエンジニアでもある
と考えてきたこと。
メーカー社員と同じように技術の仕事をするだけではなく、自分だから提供できる価値を出す必要があると考えていたこと。
そのためには、客先とのコミュニケーションが欠かせないと思い、それを自分の武器にできるよう実践してきたこと。
そう答えました。
私はもともと、自分のことをコミュニケーション能力が高い人間だとは思っていません。
むしろ、黙々と技術の仕事をしている方が好きなタイプです。
それでも、派遣という立場で仕事をする中で、
当時の私は、技術力だけでなく、派遣という立場だからこそ提供できる付加価値も必要だと考えていました。
結果として、その積み重ねが面接の場で評価されました。
私は、単純に技術力だけで採用されたのではなく、
技術に加えて、相手に伝える力やコミュニケーションという付加価値も評価された
のだと考えています。
振り返ると、この約10年間で身につけたものは、技術だけではありませんでした。
転職理由は、面接でも正直に伝えた
面接では、なぜ転職したいのかも聞かれました。
私は、
リーダーシップを鍛えたい。マネジメントを経験したい。
とストレートに伝えました。
ここは取り繕う必要がないと思っていました。
それが私の本当の転職理由だったからです。
もし、その会社がそうした役割を求めていないのであれば、採用されない方がいい。
私はそう考えていました。
採用してもらうために、相手が望みそうな答えに合わせる。
それで入社できたとしても、自分がやりたいことと会社が求めることが違っていれば、お互いに不幸になります。
転職すること自体が目的ではありません。
リーダーやマネジメントを経験できる環境へ移ることが目的でした。
だからこそ、その点については正直に伝えました。
入社してから「リーダーを目指す」と宣言した
無事に転職し、新しい職場で仕事を始めました。
入社後、上司との面談で実際のチーム状況を確認しました。
当時のチームは、さまざまな方面から人が集まって構成されていました。
そして私には、
チーム全体を見ているリーダーが不在
のように見えました。
そこで、
「人を見ることができれば、自分にもリーダーを目指すチャンスがあるのではないか」
と考えました。
私は上司に、リーダーを目指したいという意思を伝えました。
具体的に「何年後までに」と宣言したわけではありません。
ただ、心の中では、
3年以内にリーダーになる
ことを目標にしていました。
以前の職場で出会った、尊敬するリーダーの姿に近づくために転職したのです。
環境を変えただけで満足していては、転職した意味がありません。
誰もやりたがらない責任の重い仕事が、目の前にあった
そして、新しい職場で仕事をしていると、責任の重い仕事が目の前に現れました。
誰も積極的にはやりたがらない仕事でした。
私は、その仕事を引き受けました。
自分一人でできる仕事ではありません。
必要な人に協力してもらい、人を動かし、チームとして対応する必要がありました。
私はその中心となって仕事を進め、最後までやり遂げました。
この経験は、私のキャリアにとって大きかったと思います。
「あの仕事を対応した人」
と周囲から認識してもらえるようになり、少しずつ信頼されるようになりました。
ただ、これを自分一人の力だったとは思っていません。
私は本当に運が良かった。
ちょうど良いタイミングで、その仕事が目の前にあった。
そして、優秀なメンバーでチームが構成されていました。
周囲の協力がなければ、結果を出すことはできなかったでしょう。
それでも、
その仕事を引き受けるという決断は、自分でしました。
運よくチャンスが目の前に現れても、それを引き受けなければ何も変わりません。
その仕事を最後までやり遂げた実績によって、私は周囲から信頼されるようになりました。
そして、その実績を評価してもらい、
周囲からも納得してもらえる形で、リーダーに抜擢されました。
私が転職を決めたときに思い描いていた、
「技術だけでなく、人やチームを見られるリーダーになりたい」
という目標への最初の一歩を踏み出すことができました。
私にとって転職は「会社を変えること」ではなかった
振り返ると、私の転職は、
「今の会社が嫌だから」
というところから始まったものではありません。
派遣先で尊敬できるリーダーに出会い、
自分もこんな人になりたい
と思ったことが始まりでした。
でも、当時の自分が置かれていた立場の延長線上では、その役割を経験することは難しかった。
だから環境を変えることにしました。
不安がなくなったわけではありません。
技術が通用するか分からない。
人間関係を一から作らなければならない。
家庭もある。
それでも、
「あのとき行動していれば」と後悔する方が嫌だった。
だから自分で決めて動きました。
そして転職した後も、環境を変えただけでは何も起こりませんでした。
自分から「リーダーを目指す」と意思表示し、目の前に現れた責任の重い仕事を引き受け、周囲の人に助けてもらいながら最後までやり遂げた。
その結果として、リーダーになる機会を得ることができました。
私にとって転職とは、
会社を変えることではなく、なりたい自分に近づくために環境を変えること
だったのだと思います。
あなたがなりたい姿は、今の延長線上にありますか?

今の仕事に大きな不満がなくても、
「このままでいいのだろうか?」
と感じることはあると思います。
そんなとき、すぐに、
「転職するべきか?」
と考える必要はないと私は思っています。
まず考えたいのは、
「自分は、これからどんな人になりたいのか」
です。
私の場合は、尊敬できるリーダーとの出会いによって、その姿が具体的になりました。
そして、
「今の環境を続けていれば、その姿に近づけるだろうか?」
と考えました。
答えがNOだったから、私は環境を変えました。
あなたの場合はどうでしょうか。
5年後、どんな仕事をしていたいでしょうか。
どんな責任を持っていたいでしょうか。
誰から、どんな人だと思われたいでしょうか。
その姿は、今の延長線上にあるでしょうか。
今日の一歩
5年後に、
「こうなっていたい」
と思う自分の姿を、一つだけ書いてみてください。
そのうえで、
「今の仕事を続けていれば、その姿に近づけるだろうか?」
と考えてみてください。
すぐに転職する必要はありません。
今いる場所と、なりたい自分との距離を知る。
まずはそこからでいいと思います。

