私は、管理職になってから、

「自分が組織の中で一番暇な状態を作りたい」

と考えるようになりました。

もちろん、何もしないという意味ではありません。

むしろ逆です。

人を見るために、自分の手を空けておきたい。

そのために、私は余白を持っていたいと思っています。

この考えに至ったのは、「人を見る」ということを真剣に考えるようになったからです。

当時、私の組織には25人ほどのメンバーがいました。

25人全員と向き合おうと思ったとき、自分自身が業務を抱えながら、その片手間で人を見ることには限界があると感じました。

中途半端に見る。

少し話しただけで分かった気になる。

それでは、見ていないことと大差ありません。

むしろ、

「見た気になっている状態が、一番危ない」

と私は思うようになりました。

だから、人を見るための時間を作る。

そのために、自分の仕事を減らす。

少なくとも当時の私の組織では、管理職である自分が一番余白を持っている状態の方が、組織全体を見やすいと感じました。

そこから私は、

「組織で一番暇な管理職を目指そう」

と考えるようになりました。

25人を「片手間」で見ることはできなかった

管理職になると、やることは増えます。

判断する。

会議に出る。

トラブルに対応する。

経営層へ報告する。

部門間を調整する。

さらに、自分自身がプレイヤーとして仕事を持っていれば、現場の仕事もあります。

そんな状態で、

「部下のこともちゃんと見よう」

と思っても、少なくとも私には難しいことでした。

一人ひとりが今どんな仕事をしているのか。

何に困っているのか。

成長しているのか。

何か引っかかっていることはないのか。

それを片手間で見ることはできませんでした。

だから私は、

中途半端に見るくらいなら、見ていないのと大差ない

と考えるようになりました。

特に怖いのは、

「自分はちゃんとメンバーを見ている」

と思い込んでしまうことです。

まず、自分自身に余白を作る必要がありました。

暇になるために、まず自分の仕事を手放した

私が最初にやったのは、

自分で持っている現場業務を手放すこと

でした。

✅私が仕事を任せるときに意識していることは、「部下に仕事を任せる方法|失敗させないことより、自分で決めてもらう」で詳しく書いています。

開発業務からは完全に手を離しました。

それまで私が行っていた現場の業務は、各チームリーダーへ委譲しました。

自分がプレイヤーとして仕事を抱えていたら、人を見る時間を作りにくいからです。

次に見直したのが会議です。

単なる情報共有のための会議はなくし、掲示板やチャットで共有するようにしました。

集まって話し合う必要があることは会議でやる。

でも、

「知っておいてください」

だけなら、別の方法で共有する。

そうやって、自分の時間を少しずつ空けていきました。

暇になるには、「自分しかできない仕事」を減らす

もう一つ、強く意識したのが属人化です。

自分しかできない仕事が増えれば増えるほど、自分の時間はなくなります。

だから私は、自分が初めて行う仕事でも、

「次は自分以外の人でもできる状態にしておこう」

と考えるようになりました。

手順を整理する。

必要な情報を残す。

メンバーと共有する。

そうして、自分しかできない仕事を減らしていきました。

私にとって、余白を作るうえで属人化は大きな障害でした。

だから、

暇になるには、仕事そのものを減らすというより、自分にしかできない仕事を減らす。

私はそう考えています。

余白ができて、ようやく「人を見る」ことができた

✅私がなぜ「人を見る」ことを重視するようになったのかは、「技術より人を見ろ」の記事で詳しく書いています。

自分の手が少しずつ空いてくると、人を見るための時間を取れるようになりました。

その一つが、月1回の1on1です。

基本は15分から30分。

話したいことが多ければ、1時間になることもあります。

予約は各自で取ってもらっています。

内容はかなり自由です。

仕事の悩みでもいい。

最近気になっていることでもいい。

雑談でもいい。

私は、

毎月少しでも顔を合わせること自体に意味がある

と思っています。

一方で、目標面談や評価面談は別に実施します。

1on1と評価の場は、できるだけ分けています。

1on1は「評価する場」にしない

1on1で重要なのは、重たくしすぎないことだと思っています。

毎回、

「最近どう?」

くらいから始めてもいい。

仕事の話をしてもいいし、雑談でもいい。

もし1on1で話したことがそのまま評価に使われると思われたら、本音で話しにくくなるかもしれません。

だから私は、

評価する場ではなく、まず相手を知るための場

として1on1を使っています。

そこで意識していることがあります。

しっかり聞く。

すぐ否定しない。

良いところはほめる。

余計なアドバイスはしない。

そして、本人の信頼を損なわないよう、面談内容を必要以上に他人へ広げない。

管理職になると、つい問題を解決したくなります。

何か相談されると、

「こうした方がいい」

「自分ならこうする」

と答えたくなる。

でも、本人は答えが欲しいとは限りません。

ただ聞いてほしいこともあります。

だから私は、

まず聞く。

それを大切にしています。

「いつもと違う」を見逃さない

人を見るといっても、何か特別なことをしているわけではありません。

私が気にしているのは、

普段との違い

です。

たとえば顔色。

身だしなみ。

服装。

いつもより疲れているように見える。

発言内容もそうです。

普段よりネガティブな言葉が増えている。

不平不満が目立つ。

そうした変化が気になることがあります。

もちろん、それだけで本人に何か問題があると決めつけるわけではありません。

ただ、

「いつもと少し違うな」

と感じたら、気にかけるきっかけにします。

必要なら、少し話を聞く。

1on1を何度も重ねていくと、少しずつ本音で話してもらえる場面も増えてきました。

管理職が暇になると、悪い情報ほど早く集まる

私は普段から、

「悪い報告ほど早く報告してほしい」

と伝えています。

重大な不具合。

進捗の遅れ。

少し気になること。

何でも早く知らせてほしいと思っています。

でも、管理職自身がいつも忙しそうにしていたら、どうでしょうか。

パソコンに向かってピリピリしている。

会議ばかりで席にいない。

声をかけづらい。

そんな状態では、

「今はやめておこう」

と思われても不思議ではありません。

私自身、自分が忙しくしていた頃より、余白ができてからの方が、さまざまな情報が早く入ってくるようになったと感じています。

重大な不具合だけではありません。

「ちょっと気になっているんですが」

という段階で話が入ってくる。

そうすると、対応も早くできます。

私の組織では、重大な不具合でも、原因調査、対策、経営層への報告までを遅くとも1週間以内に完結できるケースが増えました。

また、大きな問題になる前に対処できたと感じることも増えました。

私の経験では、

忙しいときより、暇なときの方が情報が集まります。

言い換えるなら、

暇だから情報が減るのではなく、暇だから情報が集まる。

私はこれを、管理職が余白を持つ大きな価値の一つだと感じています。

忙しい管理職ほど頑張っている、とは限らない

もちろん、忙しいこと自体が悪いわけではありません。

必要な時期には、管理職が忙しくなることもあります。

私が問題だと思っているのは、

自分で仕事を抱え込みすぎた結果、人を見る余白まで失っている状態

です。

以前の私は、

予定が詰まっている。

仕事をたくさん抱えている。

周囲から頼られている。

そんな状態に、どこか価値を感じていたように思います。

でも、自分が手いっぱいになっていると、組織に何か起きたときに動けません。

メンバーを見る時間もなくなります。

小さな変化にも気づきにくくなる。

将来の問題について考える時間も減ります。

だから今は、

「忙しい管理職=良い管理職」

とは考えていません。

必要なときにすぐ動ける余白を持っていること。

それも管理職には必要だと思っています。

暇な管理職の仕事は、「何もしないこと」ではない

では、暇な管理職は何をしているのか。

私の場合は、

人を見る。

話を聞く。

情報を集める。

問題の兆候を見る。

必要なときに判断する。

人と人をつなぐ。

部下に成長の機会を作る。

組織として次に何をするべきか考える。

そういったことに時間を使います。

✅私が仕事の中で使っている「人間マップ」という考え方

どれも、目の前で手を動かして成果物を作る仕事ではありません。

でも、

手を動かしていないから、仕事をしていないわけではありません。

むしろ、

手を空けているからこそ、できる仕事があります。

私は、その仕事こそ管理職として大切なのではないかと思っています。

個人の成長が、組織と会社の未来につながる

私が人を見る時間を作りたい一番の理由は、

一人ひとりの成長を促したいから

です。

一人ひとりが成長する。

できることが増える。

任せられることが増える。

新しい役割を担えるようになる。

そうすれば、組織全体の力も大きくなっていきます。

私は、

個々の成長が組織の力になり、

その組織が価値と利益を生み、

会社が長く続いていく。

その先に、社員やその家族の安心や幸福にもつながっていく。

そう考えています。

だから、私は管理職という仕事にやりがいを感じています。

自分一人が成果を出すのではなく、

人の成長を通じて、組織を強くしていく。

そのために人を見る。

そして、人を見るために余白を作る。

だから私は、

「組織で一番暇な管理職」

を目指しています。

まとめ|暇でいることが、管理職の仕事になることもある

私が「組織で一番暇な管理職」を目指しているのは、楽をしたいからではありません。

人を見るためです。

25人のメンバーを片手間で見ることはできませんでした。

だから、

開発業務を手放しました。

現場業務をリーダーへ任せました。

情報共有だけの会議を減らしました。

自分にしかできない仕事を減らしました。

そうやって、自分の時間に余白を作りました。

その余白を、

人を見る。

話を聞く。

情報を集める。

必要なときに動く。

そして、一人ひとりの成長を支える。

そんな仕事に使っています。

私にとって、

管理職の余白は、楽をするための余白ではありません。

組織を強くするための余白です。

今日の一歩

今、自分が抱えている定型業務を一つ思い浮かべてみてください。

そして、

「本当に、自分しかできない仕事だろうか?」

と考えてみてください。

手順化できないか。

誰かに任せられないか。

会議ではなく、チャットや掲示板で共有できないか。

まず一つだけ、

「自分がやらなくても回る仕事」

に変えてみてください。

その空いた時間で、いつもより少しだけ周りの人を見てみる。

そこから、管理職としての新しい仕事が見えてくるかもしれません。