生成AIは、仕事を大きく変える可能性があります。

文章作成。

議事録。

プログラミング。

データ分析。

プレゼン資料。

調査。

アイデア出し。

使える場面はどんどん増えています。

でも、企業で使うとなると、

「便利だから自由に使えばいい」

とはいきません。

私自身、企業で生成AIの導入や利用ルールづくりに関わる中で、

AIを安全に使ってもらうには、まず使う側よりも、ルールを作る側が迷わないことが大切だ

と感じています。

社員から質問されたとき、

担当者によって答えが違う。

ある人はOKと言い、

別の人はNGと言う。

そんな状態では、

社員は余計に迷ってしまいます。

だから最初に必要なのは、

会社としてのAIガイドラインを決めること。

そしてもう一つ、

忘れてはいけないことがあります。

AIは主役ではありません。主役は人です。

どれだけAIが便利になっても、

最終的な判断や確認までAIに任せきることはできません。

この記事では、私が実際に企業でAI導入を進める中で採用している運用や考え方を中心に紹介します。

すべての企業に、そのまま当てはまるものではありません。

会社ごとの業務内容、機密管理、法務、セキュリティポリシーに合わせて考える必要があります。

まずAIガイドラインを作る

生成AIを社内で使い始める前に、

私たちはAIガイドラインを作りました。

目的は、

社員を縛ることではありません。

一番の目的は、

会社として判断をぶらさないこと

です。

社員から、

「この情報は入力しても大丈夫ですか」

「このAIサービスは使えますか」

「AIで作った画像をそのまま使えますか」

と質問されたとき、

推進側が迷っていては、

使う側はもっと迷います。

だから、

何ができて、

何ができないのか。

どこまでなら使えるのか。

迷ったときは誰に相談するのか。

それを、なるべく分かりやすい言葉で決めておきます。

私たちのガイドラインでは、

  • 機密情報
  • 個人情報
  • 人による確認
  • 会社が認めたAIサービス
  • 著作権など権利関係の確認フロー

などを明記しています。

大切なのは、

単に、

「気をつけて使ってください」

で終わらせないことです。

社員に判断を丸投げせず、会社として迷わない基準を示す。

それが、企業で生成AIを使う最初の一歩だと考えています。

企業に生成AIを導入する側として感じたのは、ツール選定よりも、人が安心して使える環境を作る方が難しいということでした。
企業に生成AIを導入する側になって分かったこと

AIの答えは、結論より「根拠」を確認する

AIは、

なんとかユーザーの期待に応えようとします。

情報が十分でなくても、

持っている情報を組み合わせながら、

答えを導き出してくれます。

それは、

AIの便利なところでもあります。

ただし、

その答えが必ず正しいとは限りません。

もっともらしい答えでも、

間違っていることがあります。

だから私は、

AIが出した結論だけを見るのではなく、その結論に至った根拠を確認すること

を重視しています。

どの情報を使ったのか。

情報源はどこなのか。

数字は正しいのか。

前提条件は合っているのか。

必要であれば、

元の資料や公式情報まで戻って確認します。

AIが自信ありげに答えたから正しい。

そう考えるのは危険です。

AIの答えを信じる前に、その答えに至った根拠を確認する。

私はこれを、

企業で生成AIを使ううえで、

基本的な姿勢の一つだと考えています。

AIは責任を取れない。最終判断と確認は人が担う

生成AIを仕事で使っていると、

とても質の高い成果物が出てくることがあります。

文章も作れる。

資料も作れる。

コードも書ける。

分析もできる。

すると、

つい、

「AIが作ったから大丈夫だろう」

と思いたくなることがあります。

でも、

問題が起きたとき、

AI自身が説明や判断をしてくれるわけではありません。

顧客に間違った情報を出した。

間違った数字で判断した。

不適切なコードを製品に使った。

権利上問題のある生成物を公開した。

そのとき、

「AIがそう言ったから」

では、

理由にはなりません。

少なくとも実務上、

AIの出力をそのまま採用するのではなく、最終的な判断と確認は人が担う。

私はそう考えています。

だから、

AIは主役ではありません。

AIは非常に優秀な支援役にはなれます。

でも、

判断し、

承認し、

説明するのは人です。

AIを使えば使うほど、

この意識は重要になると思っています。

AIに仕事を任せるときも、人に仕事を任せるときと同じように、目的と範囲を明確にし、最後は人が確認することが重要だと感じています。
部下に仕事を任せる方法|失敗させないことより、自分で決めてもらう

個人情報と機密情報は、自社ルールとして厳しく扱う

企業で生成AIを使うとき、

特に慎重に扱っているのが、

個人情報と機密情報です。

私たちの社内ルールでは、個人情報は原則としてAIへ入力しない運用にしています。

また、

漏洩すると会社の利益を損なう可能性がある機密情報についても、

原則として厳しく扱います。

ここを、

社員一人ひとりの感覚だけで判断させるのは危険です。

「このくらいなら大丈夫だろう」

「名前を消したから大丈夫だろう」

と個人判断が積み重なると、

会社として統制が取れなくなります。

だからこそ、

会社として基準を決める。

そして、

迷ったら相談する。

企業利用では、

この流れが必要だと考えています。

「禁止」か「自由」かの二択ではない

ただし、

機密情報だから、

全部AI利用を禁止すればいい。

私はそう考えているわけではありません。

実際に使ってみると、

機密レベルの高い情報ほど、

AIによる効果が大きいと感じる場面もありました。

高度な内容。

経営に関わるテーマ。

複雑なデータ。

こうしたものほど、

AIによる整理や分析、

別の視点からの意見が役に立つことがあります。

だから、

「機密情報だから絶対に使わない」

と単純に決めるだけでは、

大きな可能性まで失ってしまいます。

私たちの場合は、

機密性の高い情報にAIを使いたい場合、

リスクと期待できる効果を個別に評価する

ようにしています。

そのうえで、

必要であれば経営層の承認を得る。

少し手間もかかります。

時間もかかります。

でも、

重要なのは、

「禁止」か「自由」かの二択ではありません。

使う価値があるなら、リスクを理解したうえで、会社として判断する。

その考え方を大切にしています。

AI利用の責任を社員個人に押し付けない

承認プロセスがあると、

使う側からすれば、

面倒に感じることもあると思います。

ただ、

そのプロセスには意味があります。

もし、

高い機密性を持つ情報について、

社員個人の判断だけでAIを利用し、

問題が起きたらどうなるでしょうか。

個人に大きな負担や判断責任が集中してしまいます。

だからこそ、

一定以上のリスクがある場合は、

会社として判断する。

経営層の承認を得る。

ガイドラインに沿って使う。

そうすることで、

万が一問題が起きた場合でも、

「個人が勝手に使いました」

ではなく、

会社としてルールに基づいて判断し、AI活用を進めていた

と説明できます。

私は、

安全なAI活用は、

社員一人ひとりの注意力だけに頼るものではないと思っています。

個人に判断を押し付けない仕組みを作ることも、企業側の役割です。

AI生成物だから自由に使えるわけではない

生成AIでは、

文章だけでなく、

画像やプログラムなど、

さまざまなものを作れます。

ここで注意したいのが、

AIが作ったものだから自由に使えるとは限らない

ということです。

私たちの運用では、

AIで制作した画像やプログラムなどについて、

既存作品との類似性だけでなく、

利用方法や権利関係に問題がないか

も意識しています。

ただし、

すべての生成物を、

毎回法務部門へ確認しているわけではありません。

まず、

制作した担当者自身が、

何をAIで作ったのかを把握する。

生成物に違和感はないか。

既存作品やコードとの類似性はどうか。

利用の仕方に問題はないか。

そこを確認する。

そのうえで、

判断が難しい場合だけ、

法務などの専門家へ相談します。

この流れも、

AIガイドラインに明記しています。

私は、

権利関係の確認を、最後の法務チェックではなく、制作工程の一部にする

ことが大切だと考えています。

何でも専門家へ丸投げするのではなく、

まず制作した本人が把握する。

そして、

判断できないものだけ相談する。

「迷ったら相談できる」

というルートを用意しておくことも重要です。

会社が認めたAIサービスだけを使う理由

世の中には、

多くのAIサービスがあります。

無料で使えるものもあります。

とても便利なサービスもあります。

だから、

社員が好きなサービスを自由に使いたくなる気持ちは分かります。

でも、

企業利用では、

自由にしすぎると統制が取れなくなります。

いわゆる、

シャドーAI

の問題です。

AIサービスによって、

利用規約。

入力データの扱い。

保存方法。

学習への利用。

管理機能。

こうした条件は異なります。

会社が把握していないサービスを自由に使われると、

どのサービスに、

どんな情報が入力されたのか。

そのデータが、

どう扱われるのか。

会社側で把握できなくなる可能性があります。

利便性だけを求めて、

そこに機密情報を入力してしまうかもしれません。

何か問題が起きても、

状況を確認できなければ、

会社として説明することも難しくなります。

だから私たちは、

会社が認めたAIサービスだけを使うようにしています。

使う側からすれば、

不自由に感じるかもしれません。

でも、

私は、

会社が認めたAIだけを使うルールは、社員を縛るためではなく、社員と会社の両方を守るため

だと考えています。

AI活用も企業DXの一部です。ルールだけでは進まず、現場の主体性や組織の理解が必要だと感じています。
企業DXが進まないのはなぜ?現場と組織の両方を経験して感じる壁

「便利だから使ってください」とは言わない

私たちは、

現場に対して、

「AIは便利なので、どんどん使ってください」

というスタンスではありません。

逆です。

現場から、

「このAIを使いたい」

という要望が出てきたとき、

まず聞きます。

なぜ使いたいのか。

どんな業務に使うのか。

何を改善したいのか。

どんな効果が期待できるのか。

そこを、

使いたい側にも考えてもらいます。

使いたいという要望があり、

効果が期待できるのであれば、

最初から禁止することはありません。

ただし、

説明はしてもらう。

必要なら、

承認プロセスも踏む。

それでも使いたいのであれば、

安全に使う方法を一緒に考えます。

私は、

AIを使う権利だけでなく、使う理由を説明する責任も現場に持ってもらう

ことが大切だと考えています。

企業でAIを使う以上、

自由さだけではなく、

使い方を考える責任も必要です。

安全性は推進側、目的は現場側が考える

AIを使うとき、

リスクの評価は難しいことがあります。

セキュリティ。

個人情報。

機密情報。

契約。

著作権。

こうした部分は、

DXやAIを推進する側で支援できます。

必要なら、

専門部署にもつなぎます。

でも、

「なぜこのAIを使うのか」

まで、

推進側が代わりに考えてしまうのは違うと思っています。

業務の問題を一番よく知っているのは、

現場です。

だから、

目的は現場側が考える。

安全性は推進側が支援する。

この分担が重要です。

安全性は支援する。でも、使う意味まで代わりに考えない。

それが、

主体的なAI活用につながると考えています。

ルールに疑問があるなら、破るのではなく話す

生成AIを積極的に使いたい人ほど、

ルールを窮屈に感じることがあるかもしれません。

でも、

ルールを軽んじてはいけません。

そのルールができた理由があります。

もし、

ルールを守らず生成AIを利用し、

問題が発生したら、

その影響を自分だけで引き受けられるでしょうか。

私は、

自分だけでは責任を負いきれないことを、個人判断で進めるべきではない

と考えています。

ただし、

これは、

ルールに何も疑問を持つな、

という意味ではありません。

なぜ、この情報は使えないのか。

なぜ、このAIサービスは禁止なのか。

もっと安全に使える方法はないのか。

疑問があれば、

ルールを作る側と話せばいい。

むしろ、

積極的に意見交換した方がいいと思っています。

その対話の中で、

なぜそのルールがあるのか。

どんなリスクを会社が考えているのか。

何をすれば使えるようになるのか。

多くのことを学べます。

場合によっては、

現場の意見から、

ルールそのものが改善されることもあるでしょう。

ルールを守ることと、何も考えず従うことは同じではありません。

疑問があれば、

破るのではなく、

話す。

それが大切です。

AIがどれだけ進化しても、最終的に判断し、責任を持つのは人です。これは、私が仕事を通じて感じてきた「技術より人を見ろ」という考えにもつながっています。

まとめ|AIは主役ではない。主役は人

生成AIを仕事で使うとき、

私が特に大切だと考えていることをまとめると、

次のようになります。

まず、

会社のAI利用ルールを確認する。

AIの答えは、

結論だけではなく根拠を確認する。

個人情報や機密情報は、

自社のルールに従って慎重に扱う。

AI生成物についても、

類似性だけでなく、

利用方法や権利関係に問題がないかを確認する。

会社が認めたAIサービスを使う。

分からなければ、

専門部署やルールを作る側へ相談する。

そして、

最後に判断するのは人です。

AIは主役ではありません。主役は人です。

AIは、

とても便利です。

だからこそ、

正しく使えば、

大きな力になります。

でも、

便利さだけを見て、

ルールや責任を忘れてはいけません。

生成AIを積極的に使いたいなら、

まずルールを知る。

疑問があれば、

勝手に破るのではなく、

ルールを作る側と話す。

安全性と利便性を両方考える。

そうやって、

使える範囲を少しずつ広げていく。

それが、

企業で生成AIを使ううえで、

大切な姿勢だと私は考えています。

今日の一歩

もし仕事で生成AIを使っているなら、

一度、

「自分は会社のAI利用ルールを説明できるか」

を確認してみてください。

説明できないのであれば、

まずルールを確認する。

そこが、

安全にAIを活用する第一歩です。