エンジニアの市場価値とは?技術力だけではないと考える理由

エンジニアの市場価値というと、
「どんな技術を持っているか」
「どれくらい年収が高いか」
「どれだけ希少なスキルがあるか」
といったことを思い浮かべる人が多いと思います。
もちろん、専門技術は重要です。
特に、誰にも負けないような技術力や、希少性の高い専門性がある人は、それ自体が大きな価値になります。
ただ、私は長くエンジニアとして働き、管理職や採用にも関わる中で、
市場価値は、技術力だけでは決まらない
と感じるようになりました。
私が市場価値を考えるときに意識するのは、
「この人に何を任せられるか」
です。
どれだけ知識があっても、周囲と仕事を進められない。
問題が起きても自分から動けない。
相手の意図を理解できない。
そうなると、実際の仕事では活躍できる範囲が狭くなってしまいます。
逆に、一定の技術力に加えて、人と意思疎通でき、自分ごととして動き、問題を解決まで持っていける人は、任せられる仕事が増えていきます。
この記事では、エンジニアの市場価値を、技術力だけではなく、
仕事をする上で必要な基礎力
という視点から考えてみます。
エンジニアの市場価値は「技術力だけ」では決まらない

技術力は、エンジニアにとって重要です。
これは間違いありません。
高い専門性を持っている人。
難しい技術課題を解決できる人。
特定分野で圧倒的に詳しい人。
そういう人は、それだけで大きな価値があります。
一方で、誰もがそこまで飛び抜けた専門性を持っているわけではありません。
むしろ多くのエンジニアは、一定の技術力や知識を持ちながら、チームの中で仕事をしています。
その場合に重要になるのが、
専門技術以外の力
です。
実際の仕事では、
相手の意図を理解する。
情報を整理する。
問題を解決する。
期限を守る。
変化に対応する。
自分の状態を整える。
指示を待たずに動く。
といった力が必要です。
私は、
エンジニアの市場価値は「専門技術 × コアスキル」で考えると分かりやすい
と思っています。
私が考える「7つのコアスキル」
どんな職種であっても、社会人として働く上で必要だと思う力があります。
私は、それを次の7つに整理しています。
| コアスキル | 意味 | 仕事での具体例 |
|---|---|---|
| コミュニケーション力 | 人と理解し合う力 | 相手の質問意図を理解する。自分の考えを分かりやすく伝える。認識のずれを確認する。 |
| 論理的思考力 | 物事を整理して考える力 | 情報を整理し、原因と結果を分ける。結論と根拠を明確にして説明する。 |
| 問題解決力 | 問題を解決まで持っていく力 | 問題を発見し、原因を調べ、対策を考え、実行して結果を確認する。 |
| タイムマネジメント力 | 時間を有効に使う力 | 優先順位を決める。期限から逆算する。重要度の低い仕事に時間を使いすぎない。 |
| 学習・適応力 | 変化に対応して成長する力 | 新しい技術やツールを学ぶ。業務の変化に合わせてやり方を変える。 |
| 自己管理力 | 自分を安定して働かせる力 | 仕事量や集中力を把握する。無理をしすぎず、調子を崩したときに立て直す。 |
| 主体性・責任感 | 自分ごととして動く力 | 指示を待たずに課題を見つける。誰もやりたがらない仕事にも手を挙げ、最後まで責任を持つ。 |
全部が完璧である必要はないと思っています。
ただ、
この中の一つでも「自分はこれが強い」と言い切れるものを持つ
ことは大切です。
反対に、これらの力が不足していると、どれだけ専門技術があっても、チームの中では力を発揮しにくくなることがあります。
自分の考えだけで進める。
相手の意図を理解しない。
問題が起きても人任せにする。
そうなると、
「話が通じにくい人」
「一緒に仕事をしにくい人」
と思われてしまうこともあります。
専門性だけではなく、仕事を周囲と進めるための基礎力が必要です。
まず土台になるのは「コミュニケーション力」
7つの中でも、私がすべての土台になると思っているのは、
コミュニケーション力
です。
コミュニケーションという言葉は、あまりにもよく使われます。
関連する書籍もたくさんあります。
そのため、
「自分は普通に話せるから問題ない」
と思ってしまいやすいかもしれません。
でも私は、コミュニケーションはとても難しいスキルだと思っています。
コミュニケーション力は「社交性」ではない
ここで間違えてはいけないのは、コミュニケーション力とは、
誰とでも仲良くなれることでも、
飲み会が得意なことでも、
友達が多いことでも、
先輩に可愛がられることでもない、
ということです。
私が考える本質は、
意思疎通
です。
自分の伝えたいことを、相手に正しく伝える。
相手が伝えたいことを、正しく理解する。
この二つができることです。
言葉にすると簡単ですが、実際にはとても難しいです。
自分では説明したつもりでも、相手には違う意味で伝わっている。
相手の質問に答えたつもりでも、本当に聞きたかったことには答えていない。
仕事では、こうしたことが頻繁に起こります。
だからこそ、コミュニケーションは「できている」と思った瞬間に学ぶのをやめるのではなく、
継続して磨くスキル
だと思っています。
技術だけでは仕事がうまくいかないと感じた経験は、
「技術より人を見ろ」
の記事でも詳しく書いています。
「話が通じる人」には情報と仕事が集まる
仕事をしていると、
「この人に相談すると話が早い」
と思う人がいます。
こちらの話をきちんと理解してくれる。
質問すれば、分かりやすく答えてくれる。
話が噛み合う。
そういう人です。
その人には、自然と人が集まります。
相談も集まります。
情報も集まります。
そして、仕事も集まるようになります。
私は、
コミュニケーション力が高い人には、人と情報と仕事が集まりやすい
と感じています。
それは結果として、任される役割の広がりにもつながります。
技術力が同じくらいであれば、
「この人なら安心して任せられる」
と思われる人の方が、次の仕事を任されやすい。
そういう積み重ねも、市場価値につながっていくと思います。
面接でも「会話できること」は大きな評価材料になる
私は中途採用の面接にも関わってきました。
その経験からも、まず重要だと感じるのは、
きちんと会話ができること
です。
これは、流暢に話せるかどうかではありません。
質問の意味を理解する。
相手が何を知りたいのかを考える。
その問いに対して、必要な情報を整理して答える。
さらに、相手の反応を見ながら、必要に応じて説明を補う。
こうしたことです。
面接は緊張する場です。
普段と同じ力を発揮するのも簡単ではありません。
だからこそ、普段からコミュニケーションというスキルに真摯に向き合う必要があります。
自分はできていると思っていても、まだ改善できるところがある。
そう認めて、
書籍などで学び直す。
会話を振り返る。
相手の質問の意図を考える。
そうした訓練を続けることには大きな意味があります。
私が採用に関わるときも、現在の技術力だけを見るわけではありません。
技術そのものに加えて、
この人と仕事の話ができるか。
周囲と協力して仕事を進められそうか。
という基礎の部分も重視します。
次に重要なのは「主体性・責任感」

コミュニケーション力と並んで、私が特に重要だと思っているのが、
主体性・責任感
です。
私の中では、これは、
自分ごととして動く力
です。
困難なこと。
面倒なこと。
人が嫌がること。
まだ誰も課題として扱っていないこと。
そうしたことに対して、
「誰かがやるだろう」
と待つのではなく、
自分に関係する問題として捉え、動く。
そして、最後まで責任を持つ。
こういう人は、自然と成長していくと私は感じています。
細かく指示しなくても、自分で考える。
必要なことを学ぶ。
失敗したら修正する。
次の問題を見つける。
そしてまた動く。
私のこれまでの経験では、主体性と責任感を持っている人ほど、自分で成長を進めていく印象があります。
それくらい、自己成長との相性が強い力だと思っています。
指示待ちの人と、自分ごとで動く人の差は大きい
反対を考えると分かりやすいです。
誰かに言われるまで動かない。
問題が起きても、
「自分の担当ではない」
と考える。
必要なことがあっても、指示を待つ。
こういう姿勢では、任せられる仕事の範囲は広がりにくくなります。
一方で、主体性・責任感のある人は、
問題を見つける。
自分ごととして考える。
解決に向けて動く。
結果まで責任を持つ。
そこまでできるので、自然と、
「この人に任せよう」
という仕事が増えていきます。
つまり、
市場価値とは、任せられる範囲の広さでもある
と私は考えています。
任される仕事や責任の広がりを「成長」という視点から考えた記事は、
エンジニアの成長とは何か?
で詳しく書いています。
残り5つのコアスキルも、すべて土台になる
コミュニケーション力と主体性・責任感を特に取り上げましたが、残りの5つも同じくらい重要です。
論理的思考力
情報を整理し、
何が問題なのか。
原因は何なのか。
何から考えるべきなのか。
筋道を立てて考える力です。
技術的な問題だけではなく、仕事全体に必要になります。
問題解決力
問題を見つけるだけではなく、
解決まで持っていく力です。
課題を指摘するだけならできます。
重要なのは、
「では、どうするか」
まで考えて動くことです。
タイムマネジメント力
仕事には期限があります。
限られた時間の中で、
何を先にやるのか。
何を後に回すのか。
何に時間を使わないのか。
優先順位を決める力が必要です。
学習・適応力
エンジニアを取り巻く環境は変わります。
技術も変わります。
ツールも変わります。
仕事のやり方も変わります。
一度身につけた技術だけで、ずっと働き続けるのは難しい。
変化に合わせて学び直す力が必要です。
新しい技術を学び続ける方法については、
50歳でも新しい技術を学び続ける
の記事で詳しく書いています。
自己管理力
仕事を続けるには、自分自身を安定して働かせることも重要です。
感情。
仕事量。
集中力。
体調。
自分の状態を把握し、崩れたときに立て直す。
これも、長く働くための大切な力だと思います。
40代・50代は「何を任せられるか」がより重要になる
40代・50代になると、市場価値について不安になる人も多いと思います。
若い人の方が新しい技術を吸収しやすいのではないか。
転職では年齢が不利なのではないか。
この先、市場価値は下がっていくのではないか。
そう考えることもあるでしょう。
私が中途採用の面接に関わってきた経験では、40代・50代には若手以上に、
「入社後すぐ何を任せられるか」
が見られると感じています。
若手であれば、これからの成長や伸びしろも含めて採用を考えることがあります。
一方で、経験を積んだ人には、
これまでの経験をどう活かせるのか。
どのような問題を任せられるのか。
どのくらい早く組織に貢献できるのか。
といった即戦力としての期待が大きくなりやすいと感じます。
飛び抜けた専門技術がある人は、とても分かりやすいです。
その技術自体が価値になります。
ただ、誰もがそこまで尖った技術を持っているわけではありません。
だから私は、40代・50代ほど、
一定の技術力+コアスキル
で考えることが重要だと思っています。
40代・50代こそ「技術力+コアスキル」で考える
若い人と、新しい技術の知識量だけで競う必要はないと思います。
もちろん、新しい技術を学ぶことは必要です。
ただ、それだけではありません。
長く働いてきたからこそ、
人と仕事を進める力。
問題を整理する力。
責任を持って動く力。
変化に対応する力。
こうしたものも積み上げているはずです。
それらを、
「当たり前にできること」
として片づけるのではなく、
自分の価値として認識する。
そして、さらに磨く。
それが大切だと思います。
特に、コミュニケーション力や主体性・責任感は、年齢に関係なく磨き続けることができます。
むしろ、経験を積んだからこそ深められる部分もあります。
年齢だけを見て、
「もう市場価値は下がっていく」
と決めつける必要はありません。
大切なのは、
今の自分に何を任せられるのか。
そして、
これから何を任せられる人になりたいのか。
だと思います。
市場価値を高めるなら、まず一つを強みにする

7つのコアスキルを見て、
「全部できなければいけない」
と考える必要はありません。
全部を完璧にするのは難しいです。
まずは、
自分はこの力なら自信がある
と言えるものを一つ作る。
それでいいと思います。
たとえば、コミュニケーション力を強みにするなら、
会話を振り返る。
質問の意図を考える。
説明の仕方を学ぶ。
関連書籍を読む。
相手の反応を見る。
そうした小さな訓練を続ける。
主体性・責任感を伸ばすなら、
人が嫌がることを一つ引き受ける。
問題を見つけたら、自分から動く。
途中で投げずに、解決まで持っていく。
そういう行動を積み重ねる。
一つの強みができると、そこから他の力も伸びやすくなります。
50代エンジニアのキャリアプランも参考になると思います。
50代エンジニアが考える「キャリアプラン」|役職や年収を目標にしなくてもいい
まとめ|市場価値とは「この人に何を任せられるか」
エンジニアの市場価値を考えるとき、技術力は重要です。
でも、私はそれだけではないと思っています。
人と理解し合える。
物事を整理して考えられる。
問題を解決まで持っていける。
限られた時間を使える。
変化に適応できる。
自分を安定して働かせられる。
そして、
自分ごととして動ける。
こうした力がある人ほど、任せられる仕事が増えていきます。
そして、任される仕事の範囲が広がれば、結果として市場価値も高まっていく。
私はそう考えています。
特に40代・50代になると、
「これからどれだけ伸びるか」だけではなく、
「今、何を任せられるか」
がより重要になります。
40代・50代で今後のキャリアそのものに迷っている方は、
40代・50代エンジニア、このままでいいのか?
の記事も参考にしてください。
だからこそ、飛び抜けた技術力がなくても、必要以上に悲観する必要はありません。
一定の技術力を持ちながら、
7つのコアスキルを磨く。
そして、その中の一つでも、
「これは自分の強みだ」
と言えるものを作る。
市場価値を高めたいなら、まずそこから始めてもいいと思います。
今日の一歩

7つのコアスキルを、もう一度見てみてください。
そして、
「今の自分が一番自信を持てるもの」
を一つだけ選んでみてください。
さらに、その力を明日の仕事でどこで使うかを一つ決めます。
市場価値は、考えているだけでは変わりません。
小さくても、実際の仕事で使うことから始めてみてください。



